研究開発プログラム

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虐待など意図的傷害予防のための情報収集技術及び活用技術

山中 龍宏(独立行政法人産業技術総合研究所デジタルヒューマン工学研究センター傷害予防工学研究チーム チーム長)

研究開発期間 平成20年度~

プロジェクトトピックス

平成23年12月16日

平成23年12月16日

平成23年11月19日

  • 毎日新聞(11月6日号・朝刊)に、「虐待:ソフトで判別 横浜の小児科で試験導入」と題して、このプロジェクトの取組みが紹介されました。
  • 参考リンク先:毎日.jp

平成23年11月19日

平成23年11月19日

平成22年11月15日

平成22年10月20日

平成22年7月16日

  • 7月15日放送のNHK「おはよう日本」でプロジェクトの取組みが紹介されました。
    特集「幼い命を “科学” で救え ~虐待を見分ける現場の模索~」

平成22年2月10日

  • 2月5日にプロジェクトの取組みがNHKワールドで放映されました。

平成21年7月10日

  • 毎日新聞にプロジェクトの紹介記事が掲載されました。

キーワード

山中 龍宏

傷害予防、意図的傷害、虐待、虐待診断、知識循環、小児医療、法医学、医療経済、脳神経外科、Ai(autopsy imaging) 、傷害予防工学、硬膜下血腫、硬膜外血腫、揺さぶられ症候群(shaken baby syndrome, abusive head trauma)、統計数理、大規模情報処理、 (インパクト)バイオメカニクス、シミュレーション、マルチボディ解析、有限要素解析、日常系の科学、日常系の制御工学、センサ技術、ダミー、力センサ、加速度センサ、社会システムデザイン、アクションリサーチ

概要

子どもの虐待が深刻な社会問題となっている。本プロジェクトでは、子どもの虐待を子どもの健康問題と位置づけ、虐待を早期発見し、予防するための科学技術および社会システムの開発を行う。具体的には、児童相談所、医療機関、学校、警察(検察)・法医学者などの実務者に虐待事例の情報共有技術や虐待診断支援技術を提供することで、従来は、勘や経験のみに頼らざるを得なかった虐待の発見を科学的にサポートする。そのために、本プロジェクトでは、救急医療や法医学教室などの医療機関を中心に重軽傷のみならず死亡事例の傷害情報を収集する体制を構築し、虐待診断技術の開発に不可欠なデータを整備し、これらのデータに基づいて、物理学的・統計学的に虐待を診断する技術を開発する。また、開発した技術・ソフトウェアを、地域の虐待防止ネットワークへ活用することでその有効性を検証し、他の地域へ水平展開する際のモデルケースとして提示することを目指す。

プロジェクトで取り上げる社会問題の現状や背景・社会的ニーズ

近年、乳幼児が受ける虐待が極めて大きな社会問題になっている。児童虐待相談の件数は年々増加しており、平成21年度の相談件数は4万件以上に登っている。虐待では、日常的に繰り返され、死亡や後遺症に至るケースが多く、早期発見による適切な処置が不可欠である。しかしながら、虐待の早期発見は、虐待による身体的傷害の多くが、不慮の傷害と見かけ上類似しており、判別が困難であることが多い。現在は、虐待と不慮の傷害の判別法は、現場の実務家の経験や勘に基づいた判断のみであり、科学的な判断基準が存在しないことが意図的な傷害の発見と対策を阻害する原因となっている。そこで、虐待診断技術やそのための情報共有技術を新たに開発し、児童相談所、医療機関、学校、警察(検察)・法医学者などに提供することで、科学的なデータに基づく判断を支援する。実際に、開発した技術を地域社会で運用・検証することによって、虐待の早期発見と適切な対応を可能とする地域社会システムの現状課題を明らかにし、地域社会システムのあるべき姿を、利用可能な技術とともに示す。

このプロジェクトで目指す成果とその対象

  1. 意図的傷害と不慮の事故の傷害情報のデータベース
    他のプロジェクト(JST CREST)で開発した身体地図情報機能を持つ傷害サーベイランスシステムを拡張し、新たに頭部傷害、歯科外傷、法医学教室の司法解剖事例のデータ(臓器に関するデータやCTスキャンデータを含む)、児童相談所のデータなどを記録可能にする。開発システムを用いて、重軽傷の傷害情報だけでなく、頭部傷害、法医学教室の司法解剖事例のデータを蓄積し、次で述べる頭部傷害の生体力学的シミュレーション技術や、意図的傷害と不慮の事故による傷害を識別する虐待診断ソフトウェアの基礎データとして利用する。
  2. 警察・検察の立件支援・鑑定支援のための物理的診断ソフトウェア(生体力学的シミュレーション技術)
    医療機関で収集された頭部・眼底・窒息等の傷害の詳細データや、法医学教室で司法解剖した事例のデータをもとにして傷害発生のプロセス(頭部外傷・眼底出血・窒息)を再現したり、転落状況の情報から傷害発生の有無を診断したりすることを可能にする生体力学的シミュレーション技術を開発する。開発したシミュレーション技術は、次で述べる虐待診断支援ソフトウェアの基礎技術として用いたり、虐待事件が疑われる警察の捜査の技術協力に応用する。
  3. 一般診療所・医療機関・児童相談所・学校向けの統計的虐待診断支援ソフトウェア(因果構造分析にもとづく虐待診断支援技術)
    医療機関などで蓄積された傷害データベースを、確率的因果分析技術を用いて解析を行うことで、児童相談所・一般診療所・医療機関・学校等において虐待診断を支援するソフトウェアを開発する。このソフトウェアは、児童相談所や医療機関の担当者が傷害の情報や状況を聞き取って入力すると、虐待による典型的な傷害かどうか?、転落事故から起こりうる傷害かどうか?などの判断を支援してくれるものである。開発ソフトウェアは、実際の児童相談所や医療機関における運用により有用性を検証する。

問題解決に取り組む現場の人々と研究者の協働による研究開発の進め方

虐待と不慮の事故の傷害情報のデータベース

  1. 国立成育医療研究センター
  2. 千葉大学法医学教室
  3. 長崎大学病院
  4. 大阪医療センター
  5. 武蔵野日赤
  6. 産業技術総合研究所
  1. 傷害データ全般の収集
  2. 司法解剖データ、CTデータ
  3. 歯科外傷データ
  4. 頭部傷害(CTデータ)、眼底画像データ
  5.  
  6. 傷害データの蓄積ソフトウェアの開発

物理的虐待診断支援技術(生体力学的シミュレーション技術)

  1. 産業技術総合研究所
  2. 金沢大学
  3. 首都大学東京
  4. 警察・検察
  1. 生体組織特性値の計測システムの開発
  2. 生体力学シミュレーション技術(頭部外傷)の開発
  3. 生体力学シミュレーション技術(窒息・眼底)の開発
  4. 捜査協力依頼者

統計学的虐待診断支援技術(因果構造分析にもとづく虐待診断支援ソフトウェア)

プロジェクト・ミーティングの様子(小児科医師、法医学、Aiセンター、工学者、心理学者が集まり虐待の事例検討会を実施) 

  1. 産業技術総合研究所
    統計学的虐待診断支援ソフトウェアの開発
  2. 大阪市子ども虐待医療支援検討会
    地域ネットワークにおける虐待診断支援ソフトウェアの社会実装検証
  3. 神奈川県中央児童相談所
    児童相談所における虐待診断支援ソフトウェアの社会実装検証

科学的手法・知見の活用・創出

本プロジェクトでは、現場の実務者の虐待診断を支援するための科学的手法を提供する。科学的な虐待診断技術として、大規模データの統計処理に基づく統計学的虐待診断技術と、生体物理シミュレーション技術を用いた物理的虐待診断技術を開発している。これまでに、統計学的虐待診断技術に関しては、例えば、虐待による打撲傷と不慮の事故による打撲傷では、その身体部位が異なるなどの知見が得られている。統計学的虐待診断技術に関しては、主に、診療所(医療機関)、児童相談所、学校などに提供する計画であり、物理的虐待診断技術に関しては、主に、警察(検察)・法医学教室などへ活用する計画である。

成果の社会での活用・普及に向けた将来構想

本プロジェクト期間中に、児童相談所・医療機関・学校・警察(検察)・法医学教室で利用可能な虐待データ蓄積・診断ソフトウェア(統計学的診断技術と物理学的診断技術)を開発し、連携体制を組んでいる地域での継続的運用を目指す。本プロジェクト終了後、子どもの傷害予防工学研究チーム(IPERT)が中心となり、大阪と神奈川などの地域における虐待データを蓄積・共有するメリットや科学的な虐待診断の可能性を示すことで、他の地区への水平展開を図る。その際、虐待予防のための傷害データ共有ネットワークを整備する。また、参加機関が増えると、大規模な虐待データが蓄積可能となるが、それらを分析する傷害予防工学研究のコミュニティも育成する。児童相談所や医療機関だけでなく、警察、検察も極めて重要ステークホルダーであるので、捜査協力を通じた実績を蓄積しながら連携を図っていく。

プロジェクト実施者・関与者(リンク)

【プロジェクト実施者】

【プロジェクトに協力する関与者】