研究開発プログラム

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子どもを犯罪から守るための多機関連携モデルの提唱

石川 正興(早稲田大学法学学術院 教授)

研究開発期間 平成21年度~

キーワード

石川 正興

少年非行、児童虐待、いじめ・校内暴力、多機関連携

概要

本プロジェクトは、犯罪から子どもを守るために関係諸機関が現在どのように対応しているか、また機関相互の連携がどのように行われているかを解明した上で、法的吟味を加え、犯罪から子どもを守るための適正かつ有効な多機関連携モデルを提案する。

とりわけ本プロジェクトでは、子どもが犯罪・非行の被害者になることを防止するという面ばかりでなく、加害者になることを防止するという面からも多機関連携モデルを考察する。

プロジェクトで取り上げる社会問題の現状や背景・社会的ニーズ

現在、子どもの犯罪者化・被害者化を防止するための取り組みは、各対応機関単位でのいわゆる「タテ割り型」の体制になっていることが多い。その結果として、子どもの真のニーズに合わせて諸機関が適切かつ迅速に対応できない場合が見られる。

しかし、子どもの犯罪者化・被害者化を適正かつ有効に防止するためには、こうした「タテ割り型」の対応では不適当・不十分であり、各機関相互のヨコの繋がりを強化する有機的連携体制がとられることが求められている。

本プロジェクトでは、現在のみならず、将来における子どもの犯罪者化・被害者化をも防止することも視野に入れ、子どもが被害者・加害者となりうる以下の行為を対象として、多機関連携のあり方を考えた。

  1. 主として児童相談所に情報がインプットされるであろう「児童虐待」
  2. 主として学校・教育委員会に情報がインプットされるであろう「いじめ」
  3. 主として警察に情報がインプットされるであろう「(子どもから親への)家庭内暴力」、「薬物使用」、「深夜徘徊・無断外泊」

このプロジェクトで目指す成果とその対象

地方自治体(とりわけ政令指定都市)において子どもの犯罪者化・被害者化防止のために相互連携体制を採るべき諸機関(児童相談所、学校・教育委員会、警察(少年サポートセンター)等)を対象に、子どもの犯罪者化・被害者化を防止するための「適正かつ有効な多機関連携モデル」を提唱する。

問題解決に取り組む現場の人々と研究者の協働による研究開発の進め方

第一に、研究対象地域として、研究開始当初は北九州市と札幌市を選定した。これは、児童相談所、学校・教育委員会、警察(少年サポートセンター)という、子どもの犯罪者化・被害者化を防止する諸機関のうちで最前線に位置する3機関が同一の建物の中に事務所を構えて連携するという形で対応を取っている北九州市のモデル(以下、「北九州モデル」という)と、これらの3機関が別々の建物に位置しながらも、個別のケースごとに適切な連携を組織するという形で対応を取っている札幌市のモデル(以下、「札幌モデル」という)を相互に比較検討することにより、多機関連携モデルに関する客観的な評価・検証が可能となるものと考えたからである。

ただし、研究を遂行するにつれ、これら2つの地域を比較するだけでは、客観的なモデル提唱を行うには不十分であることも明らかになってきた。そこで、これら2つの地域に加え、平成22年度にはモデル地域として新たに横浜市へ研究協力を求めている。横浜市が参加することになれば、北九州・札幌の各モデルに対し第3者評価を行うことが可能となり、より客観性のある多機関連携モデルを考察できるほか、上記2つのモデルとは異なった第3のモデルを提唱できる可能性もあると考えている。

第二に、研究方法としては、以下の3段階で評価を行うことにした。

  1. 北九州モデル・札幌モデルを構成する児童相談所、学校・教育委員会、警察(少年サポートセンター)のそれぞれの機関に対する聞き取り調査ないしはアンケート調査を通した、3機関のケース対応の実態把握。
  2. それぞれのモデルを構成する児童相談所、学校・教育委員会、警察(少年サポートセンター)の諸機関との合同検討会を通した、北九州モデルと札幌モデルの相互評価。
  3. 3機関以外の犯罪対応機関(家庭裁判所・保護観察所・ガーディアン・エンジェルス等)に対する聞き取り調査および合同検討会を通した、北九州・札幌の各モデルに対する適正性と有効性の外部評価。

ただし、その過程において、少年非行の背景にある原因や個人情報の取り扱いに関して、地域ごとの顕著な特徴があることが判明したため、今後は地域ごとの多機関連携の利点・改善点について他の地域の研究協力者との相互評価をしながら、主として法的な見地から吟味を加え、より適正かつ有効な多機関連携モデルのあり方を追究することを考えている。今後、横浜市から正式な研究協力が得られたならば、上述の3段階の評価方法に加え、横浜市の3機関による北九州・札幌の各モデルに対する適正性・有効性の第3者評価を行うことを考えている。

科学的手法・知見の活用・創出

実際に相互連携体制を採っている児童相談所、学校・教育委員会、警察(少年サポートセンター)の3機関からの「主観的」な資料の収集分別を行うと共に、①上記3機関の相互評価、②上記3機関以外の犯罪対応機関(家庭裁判所、保護観察所、地域ボランティア団体)からの評価、③異なる形態の3機関連携体制を採用する北九州市と札幌市による相互評価といった、多機関からの「客観的」な外部評価を行う。さらに、少年非行の背景にある原因や個人情報の取り扱いに関する地域差にも着目し、多機関連携の利点・改善点について他の地域の研究協力者との相互評価を行う。

上記の方法を通じて、子どもの犯罪者化・被害者化を防止するための「適正かつ有効な多機関連携モデル」を実現させる上での諸条件、なかでも法的に整備する必要のある諸条件を検討し、「適正かつ有効な」モデルを提唱する。

成果の社会での活用・普及に向けた将来構想

本プロジェクトでは、子どもの犯罪者化・被害者化を防止するための「適正かつ有効な多機関連携モデル」を提唱するに際して、そのモデルを現実の社会において実現するための諸条件、とりわけ法的に整備する必要のある諸条件を検討する。その上でモデルを提唱することにより、北九州市・札幌市・横浜市と同様の権限を有する政令指定都市への浸透を図っていくことを目指す。

プロジェクト実施者・関与者(リンク)

【プロジェクト実施者】

◆研究代表者及びその率いるグループ

◆警察・非行防止ボランティア機関調査担当グループ

◆学校教育行政機関調査担当グループ

◆少年保護司法機関調査担当グループ

  • 棚村 政行新規ウィンドウで開く:早稲田大学法学学術院/早稲田大学社会安全政策研究所
  • 藤原 究:杏林大学総合政策学部
  • 伊藤 亜佑美:早稲田大学大学院法学研究科修士課程
  • 曽根崎 哲也:福岡保護観察所北九州支部新規ウィンドウで開く

◆児童福祉行政機関調査担当グループ

【プロジェクトに協力する関与者】

◆警察及び非行防止ボランティア機関調査担当グループ

◆学校教育行政機関調査担当グループ

  • 佐藤 哲也:北九州市立折尾中学校
  • 鎌田 茂義:北九州市教育委員会指導第二課

◆少年保護司法機関調査担当グループ

  • 松浦 弘則:福岡保護観察所北九州支部
  • 福岡家庭判所

◆児童福祉行政機関調査担当グループ

  • 村岡 章吾:札幌市児童相談所