「犯罪からの子どもの安全」とは

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有本 建男 センター長

(写真)有本 建男 センター長

【プロフィール】

1974年京都大学大学院理学研究科修士課程修了、同年科学技術庁入庁、宇宙開発事業団ロス・アンジェルス事務所長、海洋科学技術センター企画部長、日本原子力研究所広報部長、内閣府官房審議官、文部科学省科学技術・学術政策局長、内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官などを経て現在に至る。

【一言】

社会技術研究開発センターは、平成13年に設立されました。設立の理念は、地域の安全や環境など人々が日々の生活の中で困っている問題の解決のために、科学や技術の知識、経験を役立てようとの発想です。科学技術は、今までは、経済や産業に役立てるものとの視点が中心でしたから、発想の大きな転換といえます。しかし、言うは易く実行するのは大変です。なぜなら、研究者の発想や評価の仕方、センターの事業のやり方も相当変える必要があるからです。

今から4年前にセンター事業全般について、厳しい外部評価を受けました。まず、それまでの直営型の研究体制から提案公募型に切り替える。研究メンバーには、科学者技術者だけでなく、NPOや自治体、企業やPTAの方々にも参加していただく。また、研究成果の社会への実装を強く意識した事業運営をすることなどです。

私が、センター長を引受けたのは、こうした方向で改革が始まったころでした。私自身、就任する前から、21世紀には「知識のための科学」だけでなく「社会のための、問題解決型の科学」がもっと発展すべきで、発想の転換が必要と考えていました。

平成19年度にスタートした「犯罪からの子どもの安全」の領域は、センターの大きな方向転換後の第1号です。まず、領域設定の仕方を大きく変えて、科学者技術者だけでなく、地域で問題解決に取り組む産学官市民の様々なセクターの100人近い方々に、スタッフがお話を聞きに行きました。それから、ワークショップを何度か開いて議論を深め、現在の領域を設定し、課題募集の条件や研究体制などについても、詳細に検討しました。

こうした準備を踏まえて、現在、13の研究課題が進められています。これらの研究活動によって、地域において犯罪からの子どもの安全が増し、助成期間が終わった後も、持続的な活動になり、また、他の地域にも成果が移転されて効果を上げることができるか。第一走者としての期待は大きいものがあります。

通常の研究助成では、採択した後しばらく評価は行わないものですが、この事業は異なっています。毎月一回程度、領域の全体会議を開き、また研究現場に行って課題毎に状況を把握し、研究の軌道修正なども頻繁にお願いしています。片山領域総括やアドバイザーの方々には、大変な努力をしていただいています。未だ定型化された事業のやり方があるわけではありません。現在も、走りながら様々な工夫を加えつづけています。センターのスタッフ一同も、自覚と覚悟を持って事業に取り組んでいます。

これくらい仕事のやり方と意識を変えないと、社会的・公共的価値の創出は難しく、世の中から支持を得られないと思っています。経済的価値の創出をめざす研究助成事業では、ある時点からは企業が成果を引き継ぐのが通例ですが、この事業では、研究と社会との接続を注意深く行わないと、単なる論文の生産に終わってしまう心配があります。

事業の効果を上げるためには、関係者の人と人とのつながり(ネットワーク)を作り広げていくことが必須と思っています。また、事業の企画から実施、評価から改良へとPDCAサイクルを常に回すことも大切です。この領域の研究活動が優れた成果を生み、犯罪からの子どもの安全確保という課題の解決のために役立つかどうかは、センター全体の今後のあり方にも大きく影響します。社会に役立つセンターを目指してしっかり取り組んで行きたいと考えています。