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「犯罪からの子どもの安全」を語る研究開発が目指すものはこれだ
~推進者が語る経緯、目的、1年目の成果とは~

(写真)座談会の様子

■座談会出席者

東京電機大学未来科学部教授
  領域総括:片山 恒雄氏

社会技術研究開発センター
  センター長:有本 建男氏

社会技術研究開発センター
  アソシエイトフェロー:安藤 二香氏

司会・ジャーナリスト:有村 源介

社会技術研究開発センターは研究開発領域『犯罪からの子どもの安全』に取り組んでいます。領域の期間は平成19年度から24年度までの6年間で、防犯対策に科学的な知見や手法を導入するとともに、社会に役立つ効果的で持続的な取り組みとなるよう、開かれたネットワークを構築することを目指しています。こうしたテーマによる科学的で総合的な研究が行われるのは我が国で初めてのことです。センター長の有本建男氏と研究開発領域の総括責任者である片山恒雄氏(東京電機大学教授)、担当者の安藤二香氏(領域担当・アソシエイトフェロー)の3氏に、これまでの経緯と目的、1年間の成果、さらにこれからの展望を語りあっていただいた。

20世紀型科学からの脱却

司会:研究開発領域の名称を最初にお聞きした時、国が関係する研究機関のテーマとしてはユニークなものであり、どういう研究を行うのか興味を持ちました。その第一印象は当然で、このテーマによる総合的な研究は初めてのことであるとお聞きしました。社会技術研究開発センター自体が新しい組織であり、日本原子力研究所と科学技術振興事業団(当時)の連携協力のもとに、平成13年に「社会技術研究システム」が設置され、原研と事業団の研究活動を整理する中で同システムが「社会技術研究開発センター」に改組されたとのことです。社会問題の解決を目指し、取り上げる問題ごとに研究開発領域を設定して研究開発活動を行っているとのことですが、最初に設立の背景や目的について、有本センター長からお話いただきたいと思います。

(写真)有本建男氏(センター長)

有本:1999年(平11年)ハンガリーのブダベストで国際科学会議(ICSU)と国連のユネスコの共催で「世界科学会議」が開催されました。世界中から科学者・技術者のみならず、行政官や一部の国からは国会議員、ジャーナリストも含め約2000人が出席しました。日本からは日本学術会議会長の吉川弘之先生をはじめ10数名が出席しました。会議では1週間かけて、21世紀の科学・技術はどうあるべきかという議論を行いました。問題意識としては、19、20世紀型の知識を生産することに重点を置いた科学の在り方、サポートの仕方で、21世紀は大丈夫なのかという高邁なものでした。
 その結果、21世紀は、20世紀型の知識のための科学に加えて、平和のための科学、持続的発展のための科学、社会の中の・社会のための科学という新しい3つのコミットメント、責務を増やそうということになりました。
 このような高邁な理念を踏まえて、では日本はどうするのか、ということになり、この理念を踏まえたファンディング(資金提供)あるいはそのための研究システムを作ろうじゃないかということになりました。そこで科学技術庁(当時)が吉川先生にお願いし検討委員会で議論していただきました。その提言にもとづき、平成13年に「社会技術研究システム」が設置されました。
 発足してからは安全の問題とか、脳の科学を社会にどう役立てるかといった研究を行ってきましたが、今から2年前にそうした事業について包括的に外部評価が行われました。そこで強く指摘されたのが、大学などに対する研究支援の在り方についてでした。社会技術は知識の生産だけでなく、社会のために役立つ研究を支援するという理念があるにもかかわらず、これまでと同じ様に知識の生産に重点が置かれている、ファンディングや研究システムに問題があるとの指摘です。そこでセンターは、トップダウン的に領域を設定し、研究者を内部に抱えて研究開発を進めるやり方から、すべて提案公募型にすることを打ち出しました。
 それから、研究領域を設定する時に、市民あるいは問題に取り組むコミュニティの中へ入っていって、インタビューや議論をする中から研究領域を設定するという手法をとることにしました。なぜかと言うと、今までは大学の先生が中心となって研究体制を作っていたのですが、研究が最終的に社会にとって価値があるものにする、つまり“実装”されるには、市民や自治体の人たちに最初から参加してもらわなければならないとの指摘からです。研究者だけによる研究体制を作っても、なかなか社会に実装されないので、ステークホルダーと言ったりしますが、色々な関与者を含めたネットワーク作りをやろうということになりました。
 社会に実装されるように、事業のやり方を変えろとの指摘を受けて、私の前任の市川惇信先生が大きくそういう方向に舵を切りました。その方針転換を受けて設定した最初の研究領域が「犯罪からの子どもの安全」です。この領域がどのように推移していくかは、社会技術研究開発センターの今後の在り方を左右するものと位置づけられています。
 私自身は1年半前に着任しましたが、片山先生、安藤さんをはじめ皆さんの協力をいただきながら進めているこの領域が、後続の領域の兄貴分として仕事のやり方のモデルを切り拓いていく高いプライオリティを持ったものだと受け止めています。